体は剣で出来ている。 無限に広がる世界には、同じく無限の剣が刺さっている。 俺は今、その無限の世界を歩いている。 その先にあるモノに向かって その先には、丘がある。 その丘には、この無限の世界にあるはずの無い一振りの剣の鞘が刺さっていた。 アンサー 第一話/追いかけるべき背中 息を吐き、弓を引く。 目を閉じ、矢の軌道を頭の中で思い浮かべる。 そして、自分が弓を射る姿を赤い姿の男に重ねる。 心を無にし、弓の弦から自然に手を放す。 既に何千と反復した動作に、身体が無意識に反応する。 ・ ・ ・ ・ すーっ、息を吸い弓を下ろす。 聖杯戦争も終わり、その傷跡も癒え学校もいつもの落ち着きを取り戻した頃 二度とやることは無いと思っていた、弓を手にした。 その理由の一つは、今も入院している慎二の変わりに弓道部の副主将代理をする為 そして、もう一つはあいつが辿り着く事の出来なかった「正義の味方」になる為に その為にあいつの姿も背負う事を決めた。 その事を遠坂に話した時は、激しく反対された。 しかし、いくら反対だからってガントまでぶっ放すとは思わなかったが…… それでも、負けずに説得を続けた結果 「衛宮君がそこまで言うなら、もう止めないわ。 あなたが道を間違えそうになった時には と言って渋々ながら納得してくれた。 「さて、そろそろ朝飯の用意をしないと、内の王様がぼやき出す頃だな」 俺は、弓を片付けて朝食の用意をする為に台所に向かった。 「おはよう、士郎」 今更言うまでも無いが、遠坂は朝に弱い 「何よ、何か言いたいことでもあるの?」 とセイバーが少々睨む様に、こちらに目を向け答えた。 「まぁイイじゃない先生としては、士郎がまた弓道部に戻って来てくれて嬉しいし 藤ねぇのフォローに対して反論しているセイバーだが、文句を言うのも怒っているのも対して変わらない気がするんだが 「悪かったよ。 今度からは気を付けるからとりあえず飯にしよう と、さっきまで怒っていたセイバーも冷めた料理は食べたくないのか、あっさりと態度を変えてしまった。 「ムッ、シロウ何をその様な目で見ているのです。 早く朝食を食べましょう」 今日の朝は、ふっくら卵焼きとハムを軽く焼いたものとトーストだ。 「やっぱり士郎の作った卵焼きは最高よね」 コクコクと頷きながら食べているセイバーを見ても、思っている事は一緒だろう。 と多少焦りながら弁解をしているセイバー、でもそんなに俺の剣の腕って上がってるのか? 「なんにしても、遅刻はしないようにね。 じゃあ行ってきます」 それぞれが動き出したので、俺たちも剣の訓練の為道場に向かった。 滑る様に前へ踏み込んできて、竹刀を打ち込んでくるセイバー 「くっ」 体勢を低くとり、セイバーが前へ踏み込んでくる分後ろに後退し、剣撃を受け流す。 (くそっ! あいつは下がる事無くセイバーの攻撃をさばいていた スーッ、息を整え自分の間合いをとる 「いくぞセイバーーっ」 今の俺は未熟だ。 ならば攻めなければ、その先には敗北のみ俺の道には 「ただの一度も敗走はない!」 その瞬間、完全にあいつの姿が重なった。 「ア、アーチャー・・・くっ」 セイバーがあいつの名前を呼んで、竹刀を構える。しかし、今の俺には関係ない。 攻めろ、攻めろ、攻めろ 「ウオオオオォォォ」 俺の剣撃をあいつの剣筋がなぞる。 (今の俺の最大攻撃数は三撃、来る!) セイバーも攻めに転じる。 「ハアアアァァッ」 しかしそれは判っていた攻撃。 その剣撃をさばき 「痛っ」 セイバーとの距離が空いて息をついた時、頭が痛たんだ。 「!! シロウ」 セイバーが、膝をついた俺に近づいてきた。 「いや、大丈夫だ何でもない」 そう言って俺は、立ち上がろうとしたが骨が軋んだ。 「がっ」 「シロウ、動かないで下さい」 セイバーは、そう言って俺を座らせた。 「それにしても、シロウさっきのは魔術か何かですか?」 一体セイバーは、何を言っているのか? 俺に使える魔術が強化と投影しかない事は、セイバーも知ってる筈なのに 「ですから、さっきの試合の事です。 一瞬シロウの姿がアーチャーに見えました そう、とにかく攻める事だけを考えていた。 でも何故か今日に限って、完全に自分のイメージがあいつと重なっていた。 「まぁ、その話は学校が終わってからにしましょう。 もうすぐ学校の時間です。 と俺に告げてセイバーは、道場を出て家の方に走っていった。 ・・・続く 戻る |