愕然としている自分がいた 俺が目指す「正義の味方」は何だったのか? あいつは言った「正義の味方」には、救える者と救えない者がいると その手で救い上げた者達の中から零れ落ちる者は救えないと それを俺は否定しあいつに、自分の理想に勝ったのではないのか 未熟だとかそんな事は関係無い 救い上げることのできる筈の者をも救えずに 「正義の味方」を目指すだと ふざけるな!・・・・俺は今まで・・・何をしていたのだ? 救い上げることのできた者達を見て その事を糧に「正義の味方」を目指していたのか なんて・・・・愚かなんだ、くそっ! そう考えながら家に歩いていた俺の手には 微かな血が滲んでいた アンサー 第四話/救う事のできた者零れ落ちた者 家に着いた俺を待っていたのは 鬼の様な形相をしている遠坂とその目の向けられている俺を心配そうに見つめるセイバーだった 「それで?こんな時間まで何処で何をしていたのかしら衛宮君」 何か話そうにもそんな雰囲気じゃ何も言えないぞ遠坂 とりあえずこの禍々しいオーラを放っている遠坂をどうにかしないといけない 「なぁ遠坂、とりあえず此処じゃあれだし居間に行って飯にしよう。セイバーもお腹空いただろ?」 「それなら心配要らないわ。セイバーの夜御飯は私が作ってあげたから」 説得失敗・・・・・なるほどセイバーが怒ってないのはもう飯を食べたからか 「確かに此処じゃ込み入った話はできないわね。でもその前にあなた今朝私が言った事も忘れて弓を射ってきたらしいわね」 うっ、何故遠坂がそれを知っているんだ? 不味い只でさえ鬼の形相をしている遠坂に本当の事を言ったら何を言われるか判らん 「い、いやぁ美綴の奴がどうしても俺の射が見たいって言うから仕方なく射ってきた。でも遠坂に言われたから一本だけだぞ」 俺のその言い訳が不味かったのかセイバーはやれやれといった感じで俺を見ている 遠坂は如何していたかというと、フルフルと震える拳を握り締め 「へぇ衛宮君は私の言う事は何一つ聞かないのに、美綴さんの言う事なら何も言わずに利いてあげるんだ」 や、やばいどうやら俺は何も知らずに地雷原に踏み入り 地雷を踏んだらしい それも周りの地雷を撒きこんで 「ま、待て遠坂話せば判る」 「士郎のばかあああぁぁぁぁぁ!!」 遠坂の右ストレートが見事に俺の顔面に入り玄関のドアをぶち破る なんて見事な一撃 そんな事を思いながら俺は外に転がり気を失った 「さて、弓道場での事は置いといてこんな時間まで何をしてた訳?」 セイバーの膝の上で気が付いた俺に遠坂はいきなり事の詳細を求めた しかし、もう少し俺の事を心配してくれても良いと思うのだが い、一応俺達恋人同士だし 「それに付いてだが、・・・・今はまだ詳しい事は話せない」 「それは、どういうことですかシロウ?」 俺の表情が少しおかしい事に気付きセイバーが聞いてくる 「当然なんだがセイバー、最近調子はどうだ?」 「私の調子は万全です。最近はリンから送られてくる魔力も上がってきていますから。」 「ちょっと、何を言っているのセイバー?私が送っている魔力は聖杯戦争後から少しも変わってないわよ」 「それではシロウの魔力が上がってきているのですか?」 「確かに士郎の魔力は上がってきているけど、セイバーへの魔力供給は私を通しているんだから私が気付かない筈ないじゃない」 「じゃあやはりあの話は本当なのか」 少しでも言峰の話が嘘であって欲しい自分がいた 少しずつ確信に変わる真実に替わって 自分の愚かさが表に出てくる 「ちょっとそれどういう事よ!士郎あなた何か知ってるの?何処からセイバーに魔力が流れてきているか・・・・・魔力が流れてきている?・・・まさか!・・でも確かにあの時」 遠坂が何かに気付き考え込んでいる 「どういう事ですかシロウ?」 遠坂の鬼気迫る表情に何かを感じ取ったのか 少々声を荒げて問い掛けてくる 「セイバー、遠坂よく聞いてくれ。どうやらこの町にはまだ聖杯が存在しているらしい」 俺がその事を告げた時二人が立ち上がり 「そんな馬鹿な、あの時確かにセイバーが壊したはずよ」 「馬鹿な、私は今度こそ確かに聖杯を破壊したはずです」 と二人して同じ事を言っていた しかしあいつは確かに言ったのだ聖杯は存在していると 本来の寄り代であるイリヤを連れて来る事によって イリヤ・・・・・お前は今も何処かで生きているのか? そして、俺はまだ救う事ができるのか? 俺は、泣がこぼれそうになりながらもう一つの事実を口にした 「それからもう一つ、言峰が生きていた」 それを聞いた遠坂が青い顔をしている 「そんな筈無いわ!あの時確かにあいつがランサーがこいつは俺が連れて行くって」 そう言った遠坂の目には涙が溜まっていた 「そんなの・・・・そんなのって・・・それじゃあ余りにもあいつが報われないじゃない!!」 そこまで言って遠坂は耐え切れなくなったのか俯いて震えている そこにセイバーが遠坂に近づいて行き遠坂の肩を抱いて抱きしめた それは本当なら俺の役目なのだが、今の俺にその権利はあるのか? イリヤをあんなにそばで悲しんでいたであろう少女を救う事のできなかった俺に そんな権利があると・・・・・・俺にその権利が? そこで唐突に別の思考が浮かんだ 遠坂が泣いている・・・・・俺以外の男の事を思って ・・・何故泣いている?・・・・ランサーなんかの為に 何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故? ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ? ・ ・ ・ ・ ・ ヤメロあいつの為に・・・泣くな 「シロウ!!シロウ!!」 セイバーの声で正気に戻る ・・・・・俺は今何を考えていた? 俺は・・・・今・・・何を? 「シロウ!顔色が優れませんが大丈夫ですか?」 遠坂の肩を抱きながらセイバーが俺の心配をしている 「俺は大丈夫だ。遠坂もこんな状態だし今日はもう寝よう。セイバーも俺達二人を同時に心配してると疲れるだろう」 「そんな事はありません!私は大丈夫です」 「御免なセイバー」 そう言い残して、俺は居間を出た 自分の部屋に戻った俺は眠れずにいた 俺は何を考えているんだ 目の前で泣いている遠坂を励ましもせず イリヤの事を考え、その上にランサーに嫉妬して 今の俺は最低だな 俺は起き上がり部屋を後にし道場へと歩きだした ・・・続く 戻る |