竹刀がぶつかり合う音がする
俺は今何をしているんだ?
「試合中に何を考えている!」
声を荒げたセイバーが容赦無く竹刀を振り下ろす
それを俺は無言のまま受け流す
セイバーの魂の篭もった一撃を受けるたびに
俺の中のあいつが呼応する
「ハアアアアァァァ」






































アンサー 第五話/剣の誓い



道場に着いた俺の目には一人の女性が映っていた
凛としたその女性はまっすぐ俺を見据えている
「・・・・セイバーどうしたんだ?こんな時間に道場に居るなんて珍しいな」
そんな俺の声にもその姿勢を崩さずに俺を見据えていた
しばらくの沈黙、そしてセイバーは突然壁に掛けてある
竹刀を2本俺に渡し、自分も1本持ち正面に構えた
「シロウ、あなたは今何処に向かって歩いているのですか?」
そう言ったセイバーの言葉には、何かしらの意思が込められていた
「今のシロウには、あの時アーチャーの言葉を否定しただけの意思が感じられない
今のシロウにあるのは、自らの意思に対する疑問と後悔しか感じられません
そのようなシロウが私の過ちの答えを示してくれるはず在りません」
セイバーのその言葉は今の俺には重過ぎるものだった
しかしその言葉を俺は否定する事ができなかった
イリアを救う事のできなかった自分そしてあいつの言った事を
実際に味わってしまった現実
「・・・・ゴメン、セイバー」
そして俺はセイバーに対してそんな言葉を発していた
「シロウ!私はあなたにそんな事を言ってほしいのではない
シロウ竹刀を構えなさい!今のあなたがどれだけ愚かか身をもって知りなさい」
声を荒げたセイバーがそう言うと同時に、俺に竹刀を振るってきた
とっさに竹刀を構えセイバーの剣撃を受け流す
しかし今のセイバーの剣撃は今までの稽古での試合とは明らかに違っていた
殺しきれなかった衝撃が体に伝わる
「くっ」
「ハアアアアァァァ」
しかしセイバーは二撃、三撃と竹刀を走らせる
それを俺は、2本の竹刀を使い受け流す






「ハァ・・ハァ・・くっ」
もう30合は一方的にセイバーの剣撃を受け流している
今のセイバーの動きは俺には見えていない
それを受け流す事ができるのは手に持っている2本の竹刀
あいつが使っていた夫婦剣をイメージし
そのイメージにそって竹刀を振る
そして最大の理由はセイバーの竹刀からひしひしと伝わってくる殺気だ
この殺気の先を体で感じてセイバーの竹刀より先に俺の竹刀で防ぐ
しかしそれもそろそろ限界だ
セイバーから降り注ぐ剣撃には僅かな間もない
「シロウ今のあなたが如何に無力が判りますか?」
止まる事の無い剣撃の中セイバーがあの時のあいつみたいな事を言っている
「今のシロウでは、まだ会ってもいない人はおろかリンやタイガを救う事すらできない
ただ他人を助け様として無様に死にその為に周りの者達を不幸にするだけだ」
そのセイバーの言葉に対してそれを認める自分ともう一つ
心のどこかでそれを否定する自分が居た
そのもう一人の自分はあいつの姿をしていたが
何処となくかつての自分に近いイメージがあった
俺はセイバーの剣撃を受け流しながら心の中の自分の前に立っていた
頭の中で竹刀のぶつかり合う音が製鉄の音に変わっていく
もう一人の自分が俺を見据えて問いかけてくる
「お前は何故『正義の味方』になろうと思った?」
何故?そんなのは簡単な事だ
それは、俺の父に対する憧れから
俺を救った時の姿があまりにも綺麗だったから
燃え盛る炎の中、あの咽返る様な血の匂いの中
俺はその姿を見るだけで救われたから
俺は死んでいった者達の変わりに誰かを救う
「正義の味方」になりたかったんだ



そうか簡単な事じゃないか
今まで気づかなかった分
辛い思いをしてきた分
それをこれから救ってやれば良いんじゃないか
そう判った瞬間俺の心は軽くなった
「血潮は鉄で心は硝子」
自然に出たその言葉を口にした瞬間
俺は鞘が刺さっている丘の上に居た
目の前にはもう一人自分の姿
「問おう、お前は何の為に剣を振り
何を守る為に鞘を持つのか?」
俺は悪を討つ為にこの剣を振り
全ての救われるべき者の為に鞘を持つ
それが今の衛宮士郎の答えだ
「では、認めようお前が私の主である事を
そしてこの剣に誓おうお前の剣が悪を討ち
その鞘が救われるべき者の為に持たれ続ける限り
私がお前の剣になると」
そう言ったもう一人の俺の手には一振りの剣が持たれていた
カリバーン、絶対なる英雄の剣が




・・・続く


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