俺は何時もの様に、ねこさんの所でのバイトを終えて
家へ帰ろうと歩いているところに、巨身の男と白銀の髪を
靡かせている少女が立っていた。

「折角契約したサーヴァントを、奪われちゃったんだねお兄ちゃん」

その白銀の髪の少女が、突然話しかけてくるが言っている意味が判らない。
しかし、そんな俺を気にせずにその少女はこう言った。

「何となく、期待してたんだけどな。 もういいや、バーサーカー殺っちゃえ!」
「■■■■■■■!!!」

少女の声に反応した、バーサーカーと呼ばれた巨身の男が目の前から消えた
いや、消えた様に見えた。 そして次の瞬間に、首筋に嫌なものを感じて後ろに倒れた。
次の瞬間俺の首があった場所に、何かが閃いた。

「な!?」

自然とそんな言葉が、口から出た。
その閃いたモノの正体は、黒石で出来た剣の軌跡

「へぇ、今のを交わすんだ。 と言っても、偶然なんだろうけどね」
「■■■!!」

倒れている俺の前で立っている巨身の男が、剣を振り下ろそうとしている。
それを見て俺は、ああぁ死んだかなと、他人事の様に眺めていた。
しかも、その光景を懐かしいと感じていた。
何時そんな事が、あったのか覚えてないが懐かしい。

(■■■■……彼女の願いは叶ったのかな)

覚えてもいない誰かの名前が、頭をよぎる。
それは、突然の出会いだった。
今まさに、殺され様としている俺の前に一人の男が立っていた。
頭にバンダナを巻いた青年
生ける英雄という名を持つ男……横島忠夫
















Fate+GS アヴェンジャー
第一話「出会い」

SIDE 横島

巨身の男が振り下ろす剣を、霊波刀で受け流す。
受け流した剣撃が、地面に当たると同時に、爆風を巻き起こした。
その風圧を利用して、後ろで倒れている少年を抱えて後ろに飛んだ。

「おい、大丈夫か?」
「は、はい。 それより貴方は?」
「物凄い魔力を感じて、駆けつけてみたら君が殺されかけてたからな。
思わず飛び出してもおたんや。」
「か、関西…弁?」
「貴方何者なの?」

白銀の髪の少女が、俺に質問してきた。

「他人に何者か聞く時は、自分から名乗るものだぞ」
「ふん、誰だか知らないけど、殺されたくなかったら口には気を付けなさい
もっとも、見られたからにはこのまま帰さないけどね」
「殺れるものなら、殺ってみろ」

そう答えて俺は、霊波刀を構えた。

俺は、バーサーカーと呼ばれている巨身の男と殺り合う前に
後ろに居る少年に小声で話しかけた。

「逃げる準備をしとけよ」
「え? 逃げるんですか?」
「当たり前じゃ、あんなのにまともに付き合ってられるか
見たところ、あんた魔術師だろう。 肉体でも強化しておけ」
「は、はい。 でも俺未熟なんで」
「ち、じゃあ合図するから、それと同時に之に魔力を込めて走れ」

そう言って俺は、少年に「速」の陰文珠を渡す。

「あの、これは?」
「やったら判る」

そして俺は、バーサーカーと対峙した。

「人間の分際で、私のバーサーカーと殺る気? 後悔する事になるよバーサーカー!」
「■■■■■■■!!!」

唸り声を上げ、その巨身からは考えられないスピードで切り掛かって来る。
俺は、相手の剣筋を見極め黒石で出来た剣を受け止める。

(ぐっ! 予想以上に重い。 こりゃ、霊波刀がもたんぞ)

二撃、三撃と剣を受け止めている内に、限界まで研ぎ澄ました霊波刀の出力が
荒くなっていく。

「■■■■■■■ーーーー!!!」

声を上げるバーサーカーの、四撃目の斬撃を受け止め様とした時に、霊波刀が
衝撃に耐え切れなくなり消滅した。

「げ、ヤバイ!!」
「■■■ーーー!!」

俺を、一刀両断せんとする一撃を振り降ろす。
その剣を、左足を右斜め後ろに下げ、体を立てにして交わし
斬撃の爆風で飛んでくるアスファルトの破片を、サイキックソーサーを展開して
防ぎ、バーサーカーの顔目掛けて飛び、顎に霊力を込めた掌底を打つ。
しかし、鈍い音をたてただけで、特に効果が無い。
しかも、その掌底の一動作の間に、身体を捻っていたバーサーカーが渾身の薙ぎ払いを放っていた。
その薙ぎ払いを、右手で霊波刀を出し、更に左手にサイキックソーサーを展開して霊波刀の後ろに構え
薙ぎ払いの衝撃に備える。

「■■■■■■■ーーーー!!!」
「今だ、やれ!!」
「はい」

声を上げ、合図を送り、俺の方は薙ぎ払いの衝撃を霊波刀の角度で調整し、少年の方向に身体を飛ばした。


SIDE 士郎

俺は、唖然としながらも何時でも魔力を込めれる様に集中しながら
目の前の、とんでもない戦いを見ていた。

(本当にあの人は、人間なのか? あの動きに着いていってるぞ!
でも……前にもこんな事があった様な気が? あの時も俺はこうして
戦いを見ていただけだった。……あの時?)

こんな経験は無いはずなのに、まるで二度目の様なデジャブを感じながら合図を待った。

「■■■■■■■ーーーー!!!」
「今だ、やれ!!」
「はい」
「魔力回路、形成・・・」

バンダナを巻いた青年の声が聞こえ俺は、この手の中にある丸い物に魔力を込め走り出した。

「な!? 何だ? 身体が軽い」
「かぁ、相性悪すぎ! 何なんだあの身体の頑丈さは、タイガーの比じゃないぞ」
「へ? 大河?」
「こっちの話だ、気にするな。それよりも、適当な場所までこのまま走るぞ」

バーサーカーの薙ぎ払いに吹き飛ばされた、この人が受身を取りもう俺の横まで来ていた。

「ちょっと、逃げる気!?」
「人聞きの悪い、戦略的撤退じゃい!!」
「意味は変わりませんよ」

少女の声に律儀に反応しながら、走っている。

(俺は、全力なのに余裕だなぁ。 と言っても俺も律儀に突っ込んでるし)
「おい、何処かこの近くに落ち着ける場所はあるか?」
「はい、少し走った所に公園が」
「良し、じゃあ全力で撒くぞ!」
「へ? 俺これで全力なんですが」
「まったく、鍛え方が足りんぞ。 仕方ない掴まれ」
「は、はい」
「良し! 行くぞ超加速!!」
「へ? うわあああぁぁぁぁぁ」

俺は、バンダナの人に捕まった後尋常じゃないスピードを身体に感じながら
酸素が薄くなるのを感じ目の前が暗くなった。


SIDE 横島

近くの公園のベンチに、少年を寝かせて俺は頭を掻いていた。

「しまったなぁ、急激なスピードの変化でブラックアウトを起こしたのか。
起きるまで待つしかないか。 それとも、このままとんずらしようかな?」

横島は、することが無いので「診」「察」の陽文珠を出し少年に使ってみた。

(人間の身体で魔力を操るとは、まぁ本来霊力も魔力も大差無いんだが
特に肉体の魔族化は無し。 ん? なるほど魔力を通す為に特別な回路みたいな物を
使って、肉体の変化を防いでいるのか。 待てよ。さっき少年は、文珠に魔力を込める為に
回路を作っていたな。 すでに出来ている回路を使わずに何故、もう一度回路を作る必要が?
うーん、判らん。 まぁこれは、後で聞けば分かるな。)

一通り診察を終えて俺は、一息ついた。

「ブラックアウトによる、脳の後遺症は無し。 はぁ〜助かった
良し! じゃあ、起こしますかね」

そう言って俺は「起」の陽文珠を出し、少年を起こした。

「…ん、うーん。 あれ此処は?」
「よぉ、起きたみたいだな。 一応聞いておくが大丈夫か?」
「え? あ! はい大丈夫です。」
「そうか。 そういえば自己紹介が、まだだったな。
俺は、横島忠夫だ。 まぁゴーストスイーパーだ」
「あの、俺は衛宮士郎です。 さっきは、ありがとうございました。」
「その事は、気にすんな。 困った時はお互い様だ」
「はい」
「それより、あの少女とバーサーカーとかいう、巨身の男に狙われる心当たりはあるか?」
「……いえ、無いと思います。」
「そうか、それじゃあ聞いても仕方ないな。 ま、殺そうとまでしたんだ。
その内何かしら、アクションを起こしてくるだろうな」
「……はい」

士郎は、少し沈んだ様子で返事をした。

「ま、命を狙われているのにこんな事言うのも何だが、気楽にいこうぜ。
どうせなるようにしかならないしな」
「……………」

俺が、言葉を掛けても相変わらず沈んだままだ。

「…でも、俺のせいで関係の無い人が、危険な目に合うかもしれないなんて」
「ふぅ、自分の心配より、他人の心配か。 あの人が聞いたら怒られそうだな」

そう言って俺は、美神さんの姿を思い浮かべた。

「それは、当たり前じゃないですか」
「当たり前か。 でも、多分大丈夫じゃないか?
あの一帯に、人除けの結界が張ってあったしな。 向こうがプロなら
そんな事は、しないと思うぞ」
「プロですか」
「ああ、急ごしらえのモノだからある程度耐性があったりすると
通る事も出来そうだがな。 現に俺が入れたし」
「そうですか。 そういえば横島さんは、何でこの町に?」
「ああ、この町で大掛かりな魔力が、感じられたからな。
もしかしたら、俺の追っている奴が絡んでいるかもしれないんで
調査をしに来たんだ」

俺は、そう言って奴の姿を思い浮かべた。
ある人を殺した魔族の姿を、絶対殺してやると心に決めた奴の姿を。
少し殺気が出たのか、目の前で士郎の表情が固くなった。

「ん? あ、少し殺気が出たな。 大丈夫か?」
「は、はい。 それにしても、横島さんは強いんですね。
それに、さっきのあの丸い物体は一体?」
「ああ、あれは、文珠っつってな。 俺の能力みたいなもんだ」
「能力?」

俺は、士郎の目の前で「隠」の陽文珠を作って使ってみた。

「あれ? 横島さん?」
「ああ、俺は目の前に居るぞ。 これは、文珠に隠の文字を入れて
気配を消してるんだ。 人間、気配っていうのは常に出しているからな
それを、完全に消すとこんな風に目では認識できなくなるのさ」

そう説明して、文珠を使うのをやめた。

「でも、俺がさっき使ったのは色が違いましたね」
「ああ、あれは、力の質が違うからな。 士郎が使っているのは魔力だろ。
で、俺が使っているのは、霊力って言うんだが
さっきの白い文珠は、霊力を込める事によって発動するタイプの文珠で
イメージによって、効果の幅が変わってくる」
「効果の幅ですか?」
「そうだ。 例えば、飛って字を入れるとするだろ。 そうしたら士郎は
何をイメージする?」
「そうですね……空を飛ぶとか」
「それで一つ、他には空間を飛ぶとか、攻撃を弾き飛ばすとか色々あって
その時のイメージによって、効果を変える事ができる」
「へぇ、じゃあ俺の使った黒い文珠は?」
「あれは、予め此方でイメージを含んだ文字を入れて、魔力を込める事によって
イメージ通りの効果を発揮するタイプの文珠だ」
「それは、白い文珠に比べて使えないんじゃ?」
「そんな事無いぞ。 例えば、焦っていて中々イメージが浮かばない場合とかは
予め、効果が決まっていると便利だし。 効果が限定的な分威力が上がるんだ」
「なるほど、そう言われればそうですね。」
「後もう一つあるんだが、それは事情があってあまり使いたくないから
気にするな」
「分かりました」

そうは言うものの士郎は、少し残念そうだった。

「おお! こっちも聞こうと思ってたんだが
士郎は、何で一々魔力を使う為に魔力の回路を形成してるんだ?」
「へ? それは、魔力を作るとはそういうものなんじゃ?」
(おいおい、マジかよ。 何だかとんでもない事言ってるぞ)

俺は、自然と溜め息が漏れた。

「あの、如何したんですか?」
「はぁ〜、良いか士郎。 俺の見立てでは、魔力の回路ってのは
一回作ってしまえば、身体がそれを覚えているから、二度目からは
その回路のスイッチみたいなモノを切り替えるだけで魔力を使う事が出来るはずだ」
「え!? そうなんですか?」
「ああ、まぁ俺は魔力の使い方が根本的に違うから、何とも言えんが」
「でも、俺は魔力回路を作ってからじゃないと魔術使えませんよ」
(そ、それは、あれだな。 でも言って良いのか? ま、それが本人の為だな)

俺は、意を決して士郎に衝撃の事実を伝えた。

「士郎の為にハッキリ言わせてもらうが、お前魔術の才能無いな多分、いや絶対」
「へ?」

俺が現実を教えると、士郎は最初唖然としてその後ガックリと肩を落としていた。




・・・続く


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