俺自身分っていた事だが、改めて他人に言われると
堪えるものだと思った。
あの時死ぬはずだった俺が、生き残りそして俺が助ける事が
出来たかも知れなかった人達の為に、これからは少しでも
多くの人達の為に、その命を使おうと思っていたのに
身に覚えが無いにも拘らず命を狙われ、また助けられ
挙句の果てに、俺のせいで他の誰かが危険な目に遭うかも知れないと思うと
我慢が出来ない。
知らずの内に手を握り締め、少しその握り締めた手が震えていた。

「ま、才能なんていうのは、努力で如何にでもんだ。
之から如何するかが、大事だと思うぞ俺は」

と言って横島さんは、俺に気遣いの言葉を送ってくれる。
しかし俺は

「本当にそう思いますか! それなら俺がこれまでしてきた努力は?
あれだけの才能がある横島さんに、俺の気持ちが分りますか?」

込み上げて来る怒りを、ぶつける様な形で横島さんに問い掛けていた。

「あのなぁ、俺が今何を言っても駄目かも知れんが
之だけは言っておくぞ。 俺がこの力を手に入れたのは、もちろん才能が
あったからかも知れんぞ。 だがな、それ相応の努力はして来たし
多くの犠牲を払って此処まできたんだ。
士郎、魔力が使えるだけでもそれは、お前の才能だ
その才能を生かすも、殺すもお前次第なんだぞ。
お前は、それで良いのか? その怒りは、何を思っての事だ?
自分の身の回りの人や、まったく知らない他人を自分が巻き込んでしまうかも知れない
それを、自分の力だけで解決できない悔しさだろ! ならなんで何を利用してでも
自分の力で解決しようとしないんだ。」

その言葉に、一体どれだけの経験を含んでいるんだろう。
その真剣な目を見て俺は、何も言えなくなってしまった。

「と、真面目な事言ってみたが士郎、バイトをする気は無いか?」
「はい?」

いきなり話の流れが変わり、訳が分らなかった。

「バイト料は、さっきの厄介事の手伝い、それと戦闘の仕方を伝授してやるぞ。
どうだ? 悪い話じゃないと思うぞ。 わははははははは」
「な!?」

笑い声を上げながらも、その有無を言わせない言葉に俺は言葉を失った。
















Fate+GS アヴェンジャー
第二話「再会」

SIDE 横島

突然の俺の提案に、頭が真っ白になったのか士郎が言葉を失っている。
この町で起こっている、何らかの儀式について何も知らない今は
少しでも、情報が欲しかった。

(士郎は、直接何も知らないだろうが、あの少女は何か知っている感じだった。
そうすると、士郎と一緒に居ることでまた会えるだろう。
その時に、如何にかして情報を聞き出せば、何か分かる筈だからな)

俺が、思考に耽っていると士郎が復活したのか
こんな事を聞いてきた。

「それを断ればどうなりますか?」
「その時は、悪いが記憶を弄らせて貰うかな。
俺の能力を知られた訳だし。 色々やり辛くなっても困るからな」
「それは、横島さんが教えてくれたんじゃないですか!」
「俺が、何も考えずにペラペラ自分の能力を喋る筈無いだろう」
「……………」

士郎が、再び黙り込んで何か考えている。

(すんなり引き受けてくれるとは、思っていなかったが仕方ないな
出来れば、こんな事いいたくなかったが)
「士郎、悩むのは勝手だがなお前に既に拒否権は無いぞ」
「そ、それは何でですか?」
「お前は、自分の所為で誰かが傷つくのが嫌なんだろう?
なら、俺がお前の記憶を消したら、今日襲われた事も忘れてもらう事になる。
そうしたら、予め対策も考えられないで、また襲われるわけだ。
今回は、俺が居たから良いけど次は如何かな?
それに、相手も焦って事を起こした場合は周りにも被害が出るかも知れんぞ」
「!! それは……」
「さて如何する? バイトを引き受けて自分で如何にかするか?
それともまた、人に助けてもらうのか?」

士郎が悲痛の顔をして、考え込んでいる。
俺が、士郎の返事を待っていると突然さっきと同じ様な魔力を感じた。

「む? 何だこの魔力は!? もしかしてさっきのはあの少女じゃなくて
こっちのモノか?」
「え!?」
「とにかく行ってみないと分からん。 士郎着いて来い」
「でも、俺は……」
「良いから来い!! 最悪誰か死ぬかも知れないんだぞ!!」
「!! はい、分りました」
「良し、これを渡して置くから自分で自分の身は守れよ」

そう言って俺は、士郎に「速」と「盾」と「治」の陰文珠を手渡した。

「まずは、速の文珠で追いついて来い。 それから治の文珠で怪我人が居た場合
治療してやれ。 使い方は、怪我の箇所に近づけるだけだ。
後は、盾の文珠で身を守れ分ったな。じゃ先に行くぞ」
「分りました」

士郎の返事を聞いた俺は、全速力で魔力の発生源に走り出した。


SIDE キャスター

「宗一郎様!」
「ぐっ!」

宗一郎様がアーチャーの剣に横腹を斬られ、その場に蹲った。
私は、アーチャーに魔弾を1発打ち込み、宗一郎様を庇う様に走った。
しかし、セイバーがアーチャーの前に立ち
魔弾を打ち消した。

(まずい、やはりセイバーにはこの程度の魔力では、ダメージが与えられない。
でも、宗一郎様だけは、あの人だけは死んでも守ってみせる)

宗一郎様を斬り捨てんとする、セイバーの一撃を私は、右手を伸ばし
宗一郎様の襟元を掴み私の後ろに引っ張り込む。
そしてセイバーの一撃を、左手の杖で防ぐ様に打ち込む。
しかし、セイバーが素早く不可視の剣をきり返し、私の手を切り落とす。

「っ! この人は絶対に殺らせない」
「キャスター諦めない。 この状況じゃ如何足掻いても時間の問題よ。
葛木先生には、悪いけど死んでもらうわ。
貴方に関わった時点で死ぬかもしれないと分かってた筈だもの。
覚悟は出来てるんでしょう」
「黙りなさい!」

此方に少し歩み寄ってくるセイバーとアーチャーのマスターを私は、フードの下から
睨みながら、声を荒げる。

「マスター下がってください。 相手はキャスターのサーヴァント
幾ら貴方が優秀な魔術師とはいえ、油断は禁物です」

セイバーが手でマスターの行動を制し
アーチャーが夫婦剣を構える。

「…………」
「宗一郎様! いけません」

宗一郎様がアーチャーと対峙する為に私の前に出る。
しかし痛々しい脇腹から血で出てスーツに滲み込んでいる。
おそらくは、動けないであろう。

「そんなに先に死にたいのか。 なら一思いに殺ってやろう」
「宗一郎様!!」

アーチャーが夫婦剣を振るい、一方は首を
そしてもう一方は、今度こそ胴を切り裂こうと迫る。
宗一郎様は、アーチャーの首を折ろうと右手の拳を叩き込もうとした時に
後方から何者かが立ちはだかり、宗一郎様の拳を左手で受け、
アーチャーの剣撃を、右手の閃光を発しているの剣の様なモノで受け
もう片方を右足で剣の腹を蹴り上げ弾き飛ばし、左足で飛び上がり
再び右足で剣撃を蹴り飛ばした時に、上に上がった手の脇腹を思いっきり
蹴り飛ばした。

「がはっ!」
「アーチャー!!」
「ふぅ、何とか間に合ったな。 そこの二人、もう少ししたら、俺の連れが来る。
そうしたら治療してもらえ。 それまで下がっていろ」
「何者ですか?」

いきなりの乱入者に誰もが驚きながらも、セイバーは
その乱入者と対峙する。

「誰か知らないけど、その手に持っているモノは……剣…か?
あんたみたいな、女性が物騒だな」
「!! あんた何者よ。 セイバーの不可視の剣を一目で見破るなんて」
「ぐっ、凛そいつは横島忠夫だ」
「横島忠夫? 知ってるのアーチャー」
「ああ、アシュタロスの英雄そういえば君にも分かるだろう」
「えっ! それってあの世界唯一の文珠使いの?」
「ちっ、俺の事を知っている奴が居るのか」

私は宗一郎様の血流を止め、宗一郎様を庇う様に後ろに下がった。

(よく分らないけど、助けてくれたという事は敵じゃない?
とりあえず、油断せずに傍観するしか)

「おい、白髪のあんた。 俺はお前の事なんて知らんぞ。
なのに何故俺の事を知っている。 !!ま、まさか俺のストーカー
俺に、男と戯れる趣味は無いぞー!!」
「何で、そうなるのよ!!」

セイバーとアーチャーのマスターが、突っ込み微妙な空気になる。
その空気で、誰も動かないと思っていたが二人動いていた。
一人は、バンダナの男
戦いの主導権を握っているであろう、二人のサーヴァントのマスターを
取り押さえる為に。
そしてもう一人は、アーチャー
マスターを取り押さえんと走り寄るバンダナの男に、夫婦剣の片方を投げ
その剣を左に避けた所を、もう一つの剣を斜め下に振り下ろし受け止めさせた。

「へぇ、俺を知ってるって言ったが
どうやら、俺のやり口まで知っているようだな」
「ふん、そのやり口は、嫌というほど見てきたからな」
「何? それは、どういう意味だ? !!ちぃ」

お互いのやり取りの最中に先ほど投げた片方の剣が再び相手を斬り裂こうと
戻ってきた。
それに気づいたバンダナの男が、左に身を翻し剣を避ける。
その剣をアーチャーが受け止める。
それまで、静観していたセイバーが、自分の方にバンダナの男が来た時に
身を低くし、一歩前に踏み込むと己の最速の剣を振るう。

「くっ、なんのぉ」

そのセイバーの振るう剣を、右手の剣を地面に突き立て思い切り伸ばし
セイバーの一撃を避ける。

「更に、曲がれー!!」
「な!?」

そして、更にその伸ばした剣を曲げてセイバーの後ろに着地して、反撃の突きを
出す為に左手に同じ、剣を作りセイバーの後ろから繰り出す。
しかし、それを読んでいたのか
踏み込んでいた足に更に力を入れて、前に跳びその突きを躱し
正面に身体を向け、バンダナの男に剣を構えた。

「あれを、あの体勢から躱すのか。 やるなぁ」
「ちょっと、あんた本当に人間なの?」
「失礼な事言うな!!」
「純粋な人間とは言わんだろうがな」
「!! おい、お前」

アーチャーの一言でバンダナの男の雰囲気が変わった。
それまでとは違い、魔力を発する。

「…っ!」
「宗一郎様」

普通の人間である宗一郎様でも、この魔力を浴びて傷口が疼いている。

「ア、アーチャーあんた何を知ってるのか知らないけど
余り変な挑発は止めなさい!」
「おい! あんた少し黙ってろ」

そう言って、バンダナの男の姿が消えた。 いや、消えたように見えた。
次の瞬間には、アーチャーが夫婦剣を仰いでいた。
アーチャーが夫婦剣を仰いだ所に火花が散る。

「ぐぅ!」
(動揺を誘って動きを見切ろうとしたみたいだけど
どうやら逆効果だったようね。 でも、あの目は……!!)

バンダナの男が動き出す少し前に瞳の色が変わっていた。
まるで魔族のそれの様な赤い瞳
セイバーのマスターが一瞬セイバーと目配せをしそれにセイバーが頷く。
そしてセイバーがその動きを気にせずにこちらに向かって走り出した。

(不味い! あの男アーチャーに夢中で此方にセイバーが来たのに
気づいていない!? このままじゃ)

バンダナの男は、アーチャーと打ち合っている。
アーチャーが夫婦剣を仰ぐたびにその場所に二、三個の火花が散っている。
おそらくは、物凄いスピードで剣撃を放っているのだろうが
防御に徹したアーチャーは手強いのだろう。 傷は増えているが
まだ掛かりそうだ。
そしてセイバーが剣を振り上げる。
如何にか動こうとしている宗一郎様も、この魔力で身体が動かないのだろう
私を抱き寄せ庇うのが精一杯のようだ。

「死になさいキャスター」
「っ!!」

セイバーの声が聞こえ剣が振り下ろされるその一瞬の間に丸い物体が後ろから
飛んできて、私達の目の前で盾の様な物が展開し
セイバーの剣を弾いていた。


SIDE 士郎

俺が横島さんの向かった方に、走っていると突然俺にもハッキリと判る様な
膨大な魔力が辺りに充満した。

「な、何だこの魔力は!? 兎に角急がないと!」

そう言って俺は、全速力で走り出す。

(こんなスピードじゃ駄目だ。 魔力で肉体を強化するしかない。
でも、この文珠に魔力を注ぐのでほとんど魔力を使っている糞!)

そう思いながらも走っている俺の目に誰かの姿が見えた。

(あれは……葛木先生! それにあの鎧の女性は何処かで会った気が!! 不味い)

それは、死を身近に感じた俺だからだろうか? 葛木先生と誰かがが殺される気がした。
あの女性は何も持っていない筈なのに、あの手が振り降ろされた時に二人が死ぬ気がした。

(くっ、この距離絶対に間に合わない。 いや諦めるな
もう誰かが目の前で殺されるのは嫌だ!! この盾の文珠、これを投げて使えば、
魔力を込め文珠が発動する前に、あの三人の間に投げる!! 之しかない)
「…強化開始!!」

もう他に回す魔力が無いにも関わらず俺は、詠唱をし魔力を練り上げる。

「っ!! まだだ今、魔力が切れたら意味が無い! ガアアアアアァァァ!!!」

自分の魔力回路が悲鳴を上げている。 でもそんな事は今関係無い。
そして俺は、盾の文珠に魔力を込め強化した腕で全速力で前方に投げつける。
金髪の女性が腕を振り下ろす直前に、文珠が発動する。
そして、展開した盾の文珠に女性の腕が弾かれる。

(良し間に合った。 でもやはりあの腕には何かある、このままじゃ駄目だ
あの文珠の効果が何時切れるか分からない)

そう思い、俺はその女性に思い切りタックルを食らわせる為に足に力を入れ
思い切り踏み込んだ。

「だあああぁぁ!!」
「クッ!」

突然自分の攻撃が弾かれたのに驚いたのだろう。
油断していた女性に俺のタックルが当たる。
しかし銀の鎧にぶつかった瞬間に何かに守られている様に
俺の身体が後ろに弾き飛ばされる。
そして、俺の身体が転がって止まり倒れた俺が起き上がろうとした時に
腕をこちらに向けた女性が、凛とした顔で俺を睨んでいた。
それが俺にはひどく幻想的に思えた。

(ああ、まずったなぁ。 あれだけのスピードがあれば、
吹き飛ばせると思ったんだけどなぁ。 でも、やっと会えたな■■■■。)

自分の危機にも関わらず俺は、また名前も知らない誰かの名前を心の中で
目の前の女性に向かって呟いていた。

「誰だか知りませんが覚悟は良いですか?……!?シ…ロウ」
「えっ!!」

目の前の彼女が俺の顔を見て名前を呟いた。
その瞬間此処に居る全員が俺達の方に目を向けていた。






・・・続く


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