私が、自身の異変に気付いた時には全てが終わっていた。
それまで、全く流れていなかった魔力が流れていたのだ。
そして私の前にアーチャーのマスターが現れた時に、全てが理解できた。

「セイバー、もう分かっていると思うけど私が
今から貴女のマスターよ」
「悪いがたとえアーチャーのマスターが私の令呪を所持していた所で
私のマスターはシロウのみ」

私は、概念武装を身に纏いアーチャーのマスターに自らの剣を構える。
するとアーチャーが、メイガスの後ろから私のマスターを抱えて現れた。

「セイバーなら、そう言うと思いこいつは此方が抑えさせてもらった」
「くっ! アーチャー!!」
「待ちなさい。 私達は、交渉をしに来たのよ」
「では、まずはシロウを開放しなさい!」

私は、ぐったりして意識を失っているシロウを気にしながら何時でも動けるよう
油断無くアーチャーのマスターに話しかける。

「そうはいかん。 もしこいつを解放して戦闘を仕掛けられては
面倒だからな」
「では、令呪を使い私を戒めれば済む事。 その様な理屈に意味は無い
それに、騎士である私がその様な事はしない!」
「まずは、話を聞きなさい。 此方も安全の為にやっている事よ。
それにこんな事で令呪を使いたくないの」
「ふ、それは矛盾と言うものだぞ凛。 私の時あのような事の為に
令呪を使ったのを忘れたのか?」
「黙りなさいアーチャー!」
「そう怒るな。 む? セイバー、妙な真似はするなよ」

二人のやりとりを利用してシロウを奪還しようとした私に
気付いたアーチャーが、私に戒めの言葉を掛け
シロウの首筋に剣を添える。

「くっ、……分かりました。 話を聞きましょう」
「じゃあ、武装を解除しなさい。 今貴女に流れている魔力も
無料じゃないのよ」
「分かりました。 これで良いですか?」

そう言って私は武装を解除する。

「ええ。 それじゃあ交渉内容を言うわよ。
此方の目的は、セイバー貴女のマスターになるのを認める事
そして、それに対する代償として士郎の安全の確保、それを保障するわ」
「それで、シロウの安全をどの様に保障するのですか。
まさか、教会に渡してそれで終わりとは言わないでしょう?」
「もちろん。 それに士郎の日常も保障するわよ。
具体的には、聖杯戦争の記憶を消して士郎がランサーに襲われた所までの
記憶を消す。 そして聖杯戦争が終わるまでの間
私の使い魔を使って士郎を、監視する。
それで、士郎の身に害が及ぶ前に此方で対処して士郎に厄介事が
舞い込まない様にする。 もしもの時はセイバー貴女に士郎を守りに行かせるわ」

アーチャーのマスターの言葉を聞いて、私は頭の中でそれらの事をふまえた上で
シュミレーションをしてみる。

(一見穴の無い内容に聞こえるが、大丈夫か?
幾らアーチャーのマスターが優秀なメイガスとはいえ、相手にはキャスターが居る
もし、士郎を人質に取られれば、私にはどうする事も出来ない
最悪そのまま全滅という事も、それに昨日のバーサーカー
魔力が流れ、全快の状態とはいえサーヴァントが二人も契約していては力は半減
不安要素が多すぎる
最後に、聖杯を手に入れることの出来るのは一組のみ
もし最後まで残った場合に、私とアーチャーどちらを残す)

そう思い私は、アーチャーのマスターにその事を聞いてみた。

「メイガス、三つほど聞きたい事があります。
まず一つは、シロウを私達が守っているのを気付かれ
人質に取られた場合は、如何するのです?」
「そうならない様に2、3日中にキャスターとライダーを如何にかする」
「キャスターは分かりますが、ライダーは何故その中に入っているのですか?
それに、如何にかするなら今日中に何故動かないのです」
「まずライダーだけど、今日学校で魔術結界を張っているのがライダーと
断定できたから、早めに倒して被害を食い止める必要があるの。
そして今から動けないのは、士郎の記憶を消した時に不都合が無いか
見る為に近くに居る必要があるからよ。
幾ら魔力抵抗が低い士郎でも、何かの拍子に記憶を取り戻す可能性があるの。
そうなったら、私じゃ再び記憶を消す事が出来なくなる。
士郎の性格上そうなった場合、貴女の為に戦う事を選ぶはず
そうしたら、私達では守りきるなんて無理
その為の保険期間みたいなものよ」

一つ目の問いに対してはスラスラと答えていた。
おそらく、予め答えを用意していたのだろう。

「なるほど、それは理解できました。 では次に
昨日のバーサーカーは如何します。 あれは明らかにシロウを狙っていた。
もし戦闘を仕掛けるにしても、サーヴァントを二人連れている状態では
正直勝てるかどうか」
「それについては、賭けでしかないけどアーチャーとセイバーの宝具と
私の宝石で一斉攻撃を仕掛けて、マスターであるイリヤスフィールを倒す。
そうすれば、マスターからの魔力供給が無くなるバーサーカーは
すぐに動けなくはず、それまで逃げの一手で時間を稼ぎ
消えてもらうのを待つわ。 なにせ相手はヘラクレス
単独行動も無いバーサーカーが何日も現界しているとは考えにくいわ」
(なるほど、それはもっともな意見
これも予め答えを用意していた? という事は私を試しているのか?)

そんな疑問が新たに出てきたが、このメイガスなら平気な顔をして肯定するだろう。
なら聞くだけ無駄と言うものだ。

「では最後に、聖杯を手に入れる事の出来るのは一組のみ
その場合に私とアーチャーどちらに聖杯を与えるつもりですか?」
「うっ、そ、それは…」

之までとは違い、明らかに動揺している様子のメイガスに
アーチャーが助け舟を出した。

「それについては、私が答えよう。
正直私は、聖杯に特別叶えて貰う願いは無い。
ただやらなければいけない事がある。それさえ達成できれば
セイバーに聖杯は譲る。 納得いかないなら
最後二人になった時に戦って奪い合っても良いぞ」
「な!?」

正直之には、私は驚きを隠せなかった。

「まぁ、アーチャーがそれで良いなら私は何も言わないわ
で如何するセイバー。 私の交渉に乗ってくれるかしら?」

私は、少し悩んだ後

「分かりました。 貴女が私との約束を違えない限り
この剣を持って勝利を約束しましょう」

そう言って、我が剣で凛に誓いを立てた。


その筈なのに、何故シロウが私の目の前に居るのですか?

「凛どういう事です!! 何故此処にシロウが居るのですか?」

私の目は、明らかに怒りを秘めていた。
















Fate+GS アヴェンジャー
第三話「離別」

SIDE 横島

士郎の使った文珠と、金色の髪の女性の剣撃がぶつかり合い
更に、士郎の声を上げたタックルで正気に戻った。

(ちっ、やはりこの身体は沸点が低すぎる。 また精神の魔族化が進んだな
しかし、士郎が現れてからあの女性の覇気が薄れた? 如何いう事だ?)

俺は、アーチャーとの討ちあいを切り上げる為に
霊波刀を出している手の中に「断」の陰文珠を出し
アーチャーに受け止めさせる様に霊波刀を振るった。
此方の思惑通りに、受け止め様と夫婦剣を走らせた。
しかし俺の霊波刀は、その夫婦剣を紙でも斬るかの様にその夫婦剣を断った。
その断った剣はガラスが割れるかの様に消える。

「ちっ、文珠か!」
「ご名答」

そう言って、再びアーチャーが夫婦剣を出す前に距離を開けながら
士郎の後ろに居る、フードの女性に念話で話しかけた。

『おい、聞こえているか?』
『えっ!? 貴方念話が、パスも通ってないのに』
『そんな事は如何でも良い。 何があった?』

俺が念話で話しかけたのに、驚いているも
状況が状況なだけに、聞きたい事だけを聞く。

『それは、私にも分からないわ。 あの坊やを見たセイバーが
突然ああなったのよ』

セイバーと呼ばれている女性は、目の前の敵に目もくれず
ツインテールの少女を、責めるかの様な表情をしている。

『何だか分からんが、展開によっては此方に有利な状況になるかも知れん
とりあえずは、静観しながら見張ってろ』
『な!? 貴方、行き成り出てきて命令する気なの!』
『文句は後で聞いてやる。 とりあえずセイバーとは何だ?
女性の名前にしては、特徴的過ぎる』
『貴方、聖杯関係者じゃないの?』
『質問に質問で返すな。 話が進まんやないか』

先ほどまでと違い、念話に関西弁がでる位に熱は冷めたが
アーチャーが、間合いを詰めてきて夫婦剣を振るうので
冷静に話し合っていられない。

『とりあえず質問には答えるけど、その前に
宗一郎様の怪我を治して。 それから後でこちらの質問にも答えてもらうわよ』
『治療は、俺の連れに言え。 質問は、文句と一緒に後で聞く』

俺の状況を、理解しているからか
すんなりと折れてくれたフードの女性に俺は再び同じ質問をした。

『もう一度聞くぞ。 セイバーとは名前か?』
『いえ、セイバーとはクラス名よ。 私達は、サーヴァントと呼ばれ
それぞれクラス名を名乗り、真名は伏せているのよ』
『サーヴァント? 使い魔みたいなものか?
あの二人、明らかにあのツインテールの少女より格上の実力があるが』
『いいえ、私達は使い魔じゃない。 私達サーヴァントは、魔術師と契約をして
現界している存在、どちらかといえば式神に近いものよ』
『式神の様なもの、という事は契約の際の制約があるのか?』

古来から、自身より格上の式神を使役する場合は、何かと制約が必要になってくる。
身近な存在で言えば、十二神将を使役している冥子は、制約として式神のダメージが
術者にそのまま返って来るし、十二神将をコントロールする為に精神を常に使っており
情緒不安定な所になる事がある。 過去幾度と無く悩まされたプッツン等は、それが関係する。
しかし冥子の場合は、家系での遺伝もありそれが酷かった為、制約とは気がつき難かったりするが

『制約というものじゃないけど、私達にはそれぞれ意思があり契約者に支配される事が無い。
でもその代わりに、令呪と呼ばれる絶対命令権が三つ与えられるわ』
『令呪? 呪印か何かか?』
『ええ、契約者の手の甲に、赤く浮き出ている痣みたいなものが令呪
使用方法は、契約者がを出して命令を強くイメージするだけでいいわ』
『なるほど、最後にそれはどんな字を書くんだ?』
『え? 命令の令に呪文の呪と書くけど』
『分かった。 それと俺の連れには治療用の文珠を一つしか渡していないから
隙を見て、あんたに文珠を投げるから傷口に魔力を込めて使え』

俺は、とりあえず大まかな相手の関係を判断して、瞬時に作戦を立てた。

「士郎! 何時までも座っているな。 そこの男の治療をしろ」
「! は、はい」

俺の声で、正気に戻った士郎が、スーツの男の脇腹に治療をする為に
文珠を出して使おうと動いた。
それに気がついたアーチャーが標的を俺から士郎に切り替えて走り出す。

「させるかい!」

俺は、栄光の手を伸ばしセイバーに巻きつける。

「!! くっ」
「くらえ、キャッチ&リリース」

意識がツインテールの少女に向いていたのか、動けずに捕まえた
セイバーを、力一杯アーチャーに放り投げた。

「ちっ…セイバー受身は自分で取れ」

アーチャーは、飛んでくるセイバーを身を翻しながら腰を低くし頭を下げ
背中で衝撃を和らげながら、腰を上げセイバーを後ろに受け流した。
俺は、その隙にフードの女性に「治」の印文珠を出して投げつけた。

『治療が終わったらその俺の連れも守ってやれ
俺の連れに渡した文珠をあんたらに使ったから、自分の身を守る術が無い』
『分かったわ』

念話で士郎を守る様に伝えた俺は、敵の目の前で思考に耽っている少女に声を掛ける。

「おい、そこのあんた不測の事態が起こったんなら今日は引いたら如何だ?」
「え!? ば、馬鹿言わないで、キャスターに顔が割れたからには引く訳にはいかないのよ」
「忠告はしたぞ」

俺は、そう答えて少女の方に全速力で走り出した。

「アーチャー」
「分かっている」

俺と少女の間にアーチャーが立ちはだかるが俺は気にせずにそのまま突っ込んだ。
アーチャーは、俺を斬り殺そうと夫婦剣を走らせた。
その剣を受ける直前に、魔力を放出して幻影を作りそれを突っ込ませ自分は右に避け
更に少女との距離を詰める。

「!! ちっ幻影か凛!」
「セイバー!」
「今のセイバーに言っても無駄だ。 令呪を使え」
「それは、俺が使わせてもらうぜ」
「え?」

幻影を斬って、対処が遅れたアーチャーが少女にセイバーに令呪を使う様に言う。
その前に少女の前に立った俺は、「令・呪」の双文珠を出し
少女の手の甲に当ててこう言った。

「俺達を攻撃するなアーチャー!」
「!! 嘘!?」

双文珠が発動すると同時に、少女の手の甲の令呪が二つ赤から黒に変わった。

「ぐっ!……ちっ、何処までも出鱈目な能力だな。 仕方ない凛、恨むなよ」
「ちょっと、何言って…!!」
「それは……私のルールブレイカー!!」

アーチャーが変な形の短剣を出して、自分に突き刺した。

「うおっ、自殺しよった!? …ん?」

アーチャーが短剣を突き刺した次の瞬間、目の前の少女の手の甲の令呪が片方消えた。
そしてアーチャーは、俺達から距離を取り言葉を紡ごうとしていた。
更にアーチャーの殺気が向いた先は、後ろの二人ではなく士郎だった。

「アーチャー、あんた!!」
「!! 士郎逃げろ!」
「―I am the bone of my sword―」

アーチャーの殺気に気付いた俺は、士郎に支持を出し走り出す。
アーチャーが弓を出し、螺旋状の剣を矢にし弓を引き絞る。
俺は「強・化」の双文珠を出し、展開させたサイキックソーサーに使い
サイキックソーサーを強化して、士郎の前に立ちはだかろうとした。

(くそっ、間に合わんか?)

急激に膨れ上がっていく螺旋状の剣の魔力を感じながら、俺は全速力で
近づく俺の横を一陣の風が通り抜けた。
その風は、士郎を担ぎ上げ俺とアーチャーの直線状に下がった。
アーチャーは、素早く照準を士郎の方向に修正し螺旋状の剣を射った。

「カラドボルク!」
「はああぁぁぁああああ!」

俺は、展開していたサイキックソーサーで、アーチャーの攻撃を防ぐ為に
身体に流れる魔力をサイキックソーサーに集中し、更に強度を増す為に凝縮させた。
矢となった螺旋状の剣が、ドリルの様に火花を発しながら俺のサイキックソーサーを削っていく。

「くぅぅっ!! な!?」

魔力を集中し、サイキックソーサーを維持している俺の目の前で螺旋状の剣が爆発した。
俺は、その爆発音で反射的に左側に飛び退いた。
しかし、凝縮させていたサイキックソーサーでは、局部しか防げずに右腕が
爆風で吹っ飛んだ。

「ぐわぁぁぁあぁあああぁあああ!!」
「横島さん!」
「シロウ、下がってください」

右腕を失った痛みにより、倒れ込む俺の横を通り抜け、夫婦剣を構え
シロウに走り寄るアーチャーを、セイバーが迎え撃つ。

「アーチャー何のつもりです。 何故シロウを狙うのですか?
敵は、キャスターのはずだ」
「ふん、私の目的は初めから衛宮士郎のみ」
「な!?」

その言葉から、俺が感じたのは自分と同じ黒い復讐心だった。






・・・続く


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