私は、自らの役目を終え一人夢の中で佇んでいた。
目の前には、地に刺さった幾多の剣の数々
普通なら、その風景に不快感を感じるだろう。
しかし私には、どこか懐かしく、そして心地良い。
そのどこか懐かしい風景の先には、見慣れた剣の鞘
それは、私とシロウを繋ぐ大切なモノ
その鞘に私は、何故か呼ばれている気がした。
私は無意識の内にその鞘に向かって歩き出していた。
そしてその鞘に辿り着いた私は、地に刺さっている剣の鞘に手を掛け
その鞘を引き抜いた。
その瞬間私は光に包まれた。

光を抜けた先、私の目の前には一人の男が座っていた。
その男は、私の大切な人
赤い髪をしたちょっと童顔のあの人

(ああ、シロウ……会いたかった)

私は、その喜びに顔が緩むのを必死に堪えながら
私達の出会いの言葉を口にした。

「問おう、貴方が私のマスターか?」

そう言って、手を差し伸べた。
それは、何時かの焼き増し
次に返ってくる言葉を今でも鮮明に覚えている。
しかし、次に返ってきた言葉は私の頭を真っ白にさせた。

「あぁぁ……やっちまったよ」
「へ!?」











































Fate/stay night
〜in my Dream 〜 第一話 




「…やばい、やっちまった。 ああぁ師匠に何て言えばいいんだぁ」

訳が分からない。 私は未だ真っ白なままの頭で必死に状況を
理解しようとしていた。

(一体…何が? 如何して私の顔を見たとたんに……こんな)

目の前のシロウは、顔に手を当ててブツブツと何かを言っている。
その声に耳を傾けると、何やら
「絶対怒られる」だの「訓練という名の折檻が」等と言っている。
訳が分からないままの、私の後ろからサーヴァントの気配がしているのに
気がついた。

(そういえば、今表にはランサーが来ているのでは
とりあえずは撃退するのが先ですね)
「シ……マスター、表に敵が」

私のその声に、シロウが正気を取り戻し顔を引き締めた。

「そうだった。 セイバーちょっと待っててくれ。
今、ランサーが来ているから取りあえず追い返す。 話はそれからだ」

そう言ってシロウは、土蔵から出て行こうとする。

「ちょ、ちょっと待ってください。 人間であるシ、マスターが
サーヴァントを相手にするのは危険すぎます」
「ああ、マスターって言い難いならシロウで良いよ。
大丈夫、取りあえず見ていてくれ。 如何しても心配なら
やばくなったら助けてくれたら良いから」
「え!?」

全く訳が分からない。 初対面の筈の私に、シロウと呼んでくれて良いと言っている。
しかも、イントネーションも以前私が読んでいた時のもので

(一体何が如何なっているのです? まさか此処は私が経験した
世界とは違うのですか? それでもシロウが、私の事を知っているなんて有り得ない)

私が、物思いに耽っているとシロウは先に土蔵から出ていた。
私は、その後を追いかける様に土蔵を後にした。


「随分出てくるのに、時間が掛かったじゃねぇか」
「五月蝿い! お前の所為で後で師匠に怒られるじゃないか!!」

私が土蔵から出た時、ランサーとシロウが対峙しながら話をしていた。
そんな中、ランサーが私の存在に気が付いたのか
私に視線を向けながら、こう言った。

「ん? ありゃあサーヴァントか。 てめぇが7人目だったのか」
「ちっ、こうなったらもう仕方無い。 いくぞ! ……具現化開始」

シロウが詠唱を唱えた。
次の瞬間シロウの手には一振りの剣が握られていた。
それは、私がよく知る剣カリバーンだった。

「シロウ、貴方その剣は?」

私のその呟きにも反応を見せずに、シロウはランサーに向かって走り出した。

「は! おいおい良いのか、マスターが直接俺の相手をしてもよ
俺としちゃあ、そっちのセイバーに相手をしてもらいた…!!」
「同調開始」

ランサーが何か言っている途中に、シロウがもう一つの詠唱を唱える。
そして私は、自分の目を疑った。
その詠唱を唱え終えた。 シロウの動きは異常だった。
サーヴァント顔負けのスピードを出し、ランサーの胴目掛けて剣を走らせた。
一瞬動揺したランサーだが、己の槍の柄でシロウの剣撃を弾き返し
距離をとる為に、後ろに跳躍した。

「っ、やるじゃねぇか! さっきまでは本気じゃ無かったって事か」
「お前が、学校で俺を殺した時に諦めてれば良かったんだけどな」
「はん、何言ってやがる。 見られたからには死んでもらわねぇと
いけねぇんだがな、少しは楽しめそうじゃねぇか、よ!!」

ランサーが言葉を言い終えると同時に、距離を詰め突きを繰り出す。
その突きをシロウは、少し腰を低くし、カリバーンを軽く回転させ
受け流すように弾き、自分の間合いになるまで距離を詰めていく。
その戦い方を私は、呆然と眺めながら考え事をしていた。

(絶対におかしい。 シロウが此処までの戦闘力を持っているのも
そして何より、何故シロウがカリバーンを持っている?
それにあのカリバーン、あれはシロウが投影したもの?
いえ違うあれは、まさしく私の剣。 一体何が……!!)

私が考え事をしている間に、自分の得意な距離まで詰めたシロウが
ランサーの突きを弾きながら、反撃の剣を走らせている。
その攻防を10合ほど繰り返した時に
ランサーが、突きを繰り出しそれを、シロウが弾きカリバーンを振り被った時に
ランサーは槍を退かずに突き出している右手に力を入れ、槍を反す様に
槍の柄でシロウの胴元を薙ぎ払った。
そのランサーの薙ぎ払いを、シロウは振り被っていたカリバーンを
振らずに下ろしながら、自らも体制を低くし、ランサーの薙ぎ払いを受け止めた。
しかしランサーは受け止められた、槍をそのまま振り切りシロウの身体を
そのまま吹き飛ばした。
その隙に後ろに下がり、自らの槍ゲイボルクに魔力を込め始めた。

「ちっ、単純な打ち合いで互角とはな、やるじゃねぇか
正直、人間にこれを使うとは思わなかったが仕方ねぇな」
「あれは、不味い! セイバー援護を頼む」
「分かっています!」
 
色々と戸惑う事が多いが、シロウの危機を即座に感じ取った私は、
シロウの言葉と同時に不可視の剣インビジブルエアを出し、
ランサーが宝具を発動させる前に、斬り掛かる。
私の不可視の剣がランサーに当たる直前にランサーが此方を向き
私の剣の機軸に槍を走らせ、受け止める。
そのまま、二、三撃剣を受け止めたランサーが屋敷の塀の上まで
飛び退く。

「ちっ、やはりお前セイバーだな。 しかし自分の武器を隠してるとは
味な真似してくれるじゃねぇか」
「やっと、退く気になったのかランサー? いや、クーフーリンの方が良いか?」
「!! ちっ、宝具も見せてないのに真名を知ってるとは、さっきの動きといい
何もんだ! てめぇ?」
「!!」

まさか、ランサーの真名も知っているとは、もはや完全に私の知っている歴史では
無いようだ。

「本当なら此処で、殺しておきたい所だが
マスターが五月蝿いんでな。 此処は退かせてもらうぜ
だが、お前らは絶対俺が殺す」

そう言ってランサーは、この屋敷から出て行った。
暫く警戒していた私は、ランサーの気配が消えたのを確かめてから
剣を仕舞いシロウに向き合って私が疑問に思っている事を聞いてみた。

「シロウ、貴方が何故私の剣を持っているのですか?
それに私の事も知っている様ですがそれは何故ですか?」
「えーっと、それは、俺からより師匠に聞いた方がいい気がするな」
「師匠? 会った時も言っていましたが師匠とは一体?」

シロウが言っている師匠とは一体誰の事なんでしょうか?
私の経験では、その様なものは居なかったはずですが
まさか、キリツグが生きているのですか?

そんな事を思っていると、妙に親しみのある気配を近くに感じた。

「ああ、帰ってきたみたいだ。 セイバー取りあえず落ち着いて対処してくれよ」
「は? 一体何を言って……!!」

シロウの言っている意味が判らず、聞き返そうとしていた私の目に私が映った。

「シロウ、まさかと思い急いで帰ってきてみたら、やはりですか」
「あ、うぁ、えと、ごめんなさい」
「取りあえず、分かっていますねシロウ?」
「は、はい。 お手柔らかにお願いします」

そう言ってシロウが両手を上に挙げ、身を硬くした直後
もう一人の私が、シロウの持っていたカリバーンを取りシロウを吹っ飛ばした。

「さて、初めましてセイバー。 色々聞きたい事があると思いますが
取りあえず中に入りましょう」
「え? この後は凛が来るはずじゃ?」
「それなら、私が話を付けて置きました。
凛が来るのを知っているという事は、やはりあのセイバーですか。
マーリンめ、あの時の話はやはりそういう事ですか」

そう言い残し、もう一人の私は、吹き飛ばしたシロウを抱え挙げると
家の中に入っていった。

(しかし、もう一人の私……顔立ちが今の私より、凛々しいですね
背も高いし…なによりあんなに胸が、くっ)

自分とのプロポーションの違いに歯噛みしながら私は、二人の後を追い
久しぶりのシロウの家に足を運んだ。











・・・続く


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